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教育と体育の融合とはなにか。文武を両得することは、特別なことではありません

これまで教育社会学をテーマとして研究を続けてきた環太平洋大学こども発達学科 学科長・教授の村田氏に、
子どもたちの発達過程において体育がどのような影響を与えるのか、お話を伺いました。

身体を鍛え、運動能力を高めることは心、つまり脳の成長につながります
村田久先生(以下、村田)
 まず、学習指導要領によると、体育とは、『心と体を一体としてとらえ、適切な運動の経験と理解を通して、生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てる』という前置きがあります。一体ととらえるという点が大切なポイントです。つまり、心身の発達は一元であるという認識の上に成り立っています。筋肉や骨格などが備わった身体能力をもって、運動神経を磨くための練習や鍛錬をした先に生まれるものが、運動能力であるということ。その運動能力が身に付くと同時に育つものが、心、精神、脳であるとされているのです。(下図参照)
 一方、今でも根強く提言されている思考に、デカルトの心身二元論という考えがあります。心と体は別のもので、体を鍛えても心には影響がないというもの。そういう思考が今でも主流を占めていて、勉強する子は勉強、スポーツする人はスポーツのみに専念した方が、上達が早く効率がよいという考えです。心と体は別のものととらえられているので、部活をすること、勉強をすることは相反するものだという認識の人も多くいます。

学習が〝身〟に付く
パリエ編集室(以下、パリエ)
 これまで多くの学生を見てこられた村田先生に伺います。 実際のところ、身体と心の成長の一元化というのはどのような状況で見られるのでしょうか。

村田
 大学生を見ていると、運動でトップの成績を出している人は、学業も優れている人が多いです。運動ができる人は何もしなくても勉強もできるという意味ではなく、身体を鍛える過程で心も発達し、その力が学習の定着にもつながっているということだと思います。発達心理学の研究者であるシャーレイによると、乳幼児期においては体の発達が、そのまま精神の発達につながっているといわれています。あごを上げ、肩を上げ、座ることができるようになる身体的発達と同時に心も発達するのだと。また、モンテソーリは、身体的な欲求を獲得すると同時に自我も発達させることの大切さを提唱し、身体感覚を発達させる中で心が成長する、そのために環境を整えることが大切であると示しています。脳科学の最新の研究でも身体が脳を作るという説が発表されています。スポーツだけでなくパフォーミング・アーツと呼ばれるダンスや舞台芸術などの表現活動も含めた身体の発達は、心の成長につながっているのです。

折れない、やめない心
パリエ
 身体の発達が心の成長を促すとのこと。心の成長とは、具体的には何を指すのでしょうか。

村田
 運動だけでなくダンスや演劇も含めた身体表現は、すべて人間力を育てるところにつながっているのだと思います。人間力とは、やめないしなやかな心、折れない心のことです。この力を土台にすれば、運動だけでなく、学習でも仕事でも何でも応用できるはずなのです。よく、文武両道を目指すといいますが、両立という考え方自体が神話的な存在になっているといえるでしょう。両立とは、別々のものを同時に目指すことを差します。しかし身体と精神を分けてとらえず、一体としてとらえるということに立ち返ると見えてくるものがあります。身体の発達と同時に精神面も発達する、心身の発達は一体であり、両立ではなく、どちらも同時に獲得するものと認識することが体育のとらえ方として大切です。

パリエ
 中学、高校と入試を見据える中で、受検教科以外の科目に重点を置きにくい時代になっていますが、体育という教科が高校、大学まで存在する現実を照らし合わせると、学習を定着させる上でも身体の発達は欠かせないものだということが改めて理解できます。テストの点数がいくら上がるかということには敏感な大人も、身体の発達や生活リズム確立の重要性は、頭では分かっているものの後回しになりがち。体育で培われる力の大切さを再認識する必要性を感じます。