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わが子に〝育てにくさ〟を感じているママへ贈る
専門家からの Experience stories vol.2

発達凸凹について考える 第二回目

何もできなかった赤ちゃんから首がすわり、ハイハイをしてつかまり立ち、ヨチヨチ歩きができるようになったわが子。親子だけで過ごす日々を経て、保育園や幼稚園での集団生活に進みます。集団生活が始まると、これまで見えていなかったわが子の特性が気になるように。しかし、まだ学齢が小さいから、発達のスピードには個人差があるからと、正面から向き合うことを遠ざけてきた面もあります。
 そんな中で、わが子の特性に向き合うきっかけは人それぞれ。小学校の入学前に、あるいは入学後に先生から指摘され対応を考え始める場合。子どもが小さい頃からずっと悩んでいた育てにくさを解消するために親が自ら病院を訪れる場合。
 現在、子どもの発達について悩んでいる家庭は多くあります。誰にも相談できず、わが子の育てにくさに右往左往しながら、疲弊している母親も多いことでしょう。子どもの発達に思い悩んだとき、どのように行動すればよいのか。岡山県精神科医療センターの児童精神科で多くの子どもたちを診療してきた池田先生に、お話を伺いました。




発達障害の医学は、発展途上です。

パリエ編集室(以下、P)
 まずは、発達障害の原因や治療法について教えてください。

池田先生(以下、池田)
 発達障害とひとまとめに言われることが多いのですが、一括りにはできないさまざまな特性や症状があります。現在用いられている主な診断概念としては、自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害などがありますが、わずか30年、40年前には今のような発達障害の診断体系は存在しませんでした。また現時点では、それらの原因の究明や治療法の確立にも至っておらず、そういう意味では、発達障害の医学というのは、発展途上の分野だといえます。では、「病院へ行ったとしても何も変わらないのか」というと、そういうわけではありません。画一的なものがないからこそ、一人ひとりの症状を丁寧に拾い上げ、困っているところを一緒に解決していくという地道な診療を心掛けています。「根本的な治療法」というようなものはないけれども、目の前にある、困っている現象を乗り越える方法を子どもさん本人や家族とともに模索していくということです。

P 医療機関によって、あるいは対応される先生によって判断されることやアドバイスされることがさまざまなのは、そういうところに要因があるのでしょうか。

池田 そもそも、医師は診断名を付けることを第一の目的としているわけではありません。私自身、普段から「発達障害の子ども」、「そうでない子ども」というふうに明確な線引きはしていません。病院に来られているということは、親御さん自らの意志で来ていることも、周りの誰かに勧められて来ていることもありますが、何かしら困った状況が生じているということです。その背景要因の一つに、もしかすると子どもさんの発達障害特性があるのかもしれません。もしそうなら、子どもさんの特性を適切に理解した上で、このように工夫してみましょうと、子ども自身がより生活しやすいように、周りの大人がうまく対応できるように相談をしていきます。大切なのは、子どもとご家族が困っている状況を解決する方法を見出すことにあります。


病院では、どのように診察は進むのか(精神科医療センターの場合)

P いざ、病院へ行くとなると子どもが不安がらないか、親も身構えてしまいます。診察はどのように進むのでしょうか。

池田 診察の進め方について、精神科医療センターの例をお伝えしますと、①初診面接(医師面接の前に、臨床心理士や看護師などが、困っておられる事柄、受診に至った経緯、子どもさんの生育歴などについて簡単にお聞きする予診面接も行います)②心理検査(知能検査など)③医学的判断のお伝えと、今後の支援方法の検討(面接内容と検査結果に加え、保育園や幼稚園、学校からの情報を判断材料に含めることもあります)。通常は、この①②③をそれぞれ別日で行います。病院によっては、予診面接の代わりにアンケート記入をお願いしている所もあるでしょう。いずれにしても、子どもたちの行動をよく見て、できるだけ多くの人からの情報を得て、判断します。

P 主にどのような点を見て判断するのですか。

池田 発達障害を含めた精神科的診断に関しては、「DSM?5」という国際的な診断基準が用いられています。それに従い、社会性が年齢相応に育っているか、コミュニケーションの能力はどうか、こだわりの強さはどの程度か、感覚の過敏さはないかといった、主として行動上の特徴に基づいて判断します。子どもたちの特性は千差万別です。知能検査も行いますが、知能の高い低いだけを問題にするわけではなく、あくまでも子どもの得意・不得意を知り、その後の支援につなげるための検査です。インフルエンザの検査キットのように、病気に罹っているかどうかが白黒ハッキリ現れるものではありません。最終的な判断は、医師の経験も含めた総合的な判断によります。ただ前述したように診断名を付けることが目的ではありません。心配なこと、困っていることに対して、子どもの特性を理解した上でどうやって解決していけばいいのか、親を含めた周りの大人がどのような点に気を付ければ本人が生きやすい状況となるか、そういった前向きな取り組みをするために診断があると思っています。


発達障害と診断されたら、子どもの特性に応じた支援を

P 編集室に届いた一つのエピソードを紹介します。
 「娘が小学校入学を控えていたころ、幼稚園の先生から、集団での交わりが苦手なことと、感情を表現をするのが苦手なようだと指摘され、一度、専門家に診てもらった方がいいと言われました。その言葉を聞いたときは、もし病院に行って、何か診断が付いてしまったら、この子はずっと何かを背負って生きていかないといけないのでは、とショックに思い、戸惑いました。しかし、落ち着いて子ども自身のことを考えたら、そんなことはどうでもいいことだと気付きました。きちんと診てもらって、最適な指導を受けることが、この子の将来にとって大切なのだと思い直し、専門の機関に通いました。そこでは、親では思いもよらないようなアプローチで娘に細かいことを教えてくれました。例えば、色々な表情を描いたイラストがあり、このイラストの表情は怒っている感情で、こちらは、困っている表情なんだよということから教えてもらいました。専門の先生に指導していただいたお陰で、今では、問題なく対人関係を築けるようになりました」というもの。診断後は、トレーニングが重要になってくると思いますが、病院でも実施されていますか。

池田 子どもさんが発達障害と診断された場合、就学前なら、療育を勧められることが多いと思います。児童精神科、小児神経科等の医師がいる医療機関で、療育を実施しているところがあります。先ほどのお子さんの例のように、物事を具体的に順序立てて教わることで理解力が向上し、行動の改善につながることはよくあります。残念ながら当院では療育を実施していないので、療育が必要と判断した場合は、他院に紹介することになります。小中学校では通級指導教室や特別支援学級といった支援システムが整備されています。ただし発達障害と診断されたから支援学級に入る、というような機械的な話ではなく、その子どもにどんな支援が必要かを十分検討した上で判断すべきことです。
 近年、発達障害と診断される子どもが増えてていると言われますが、価値観の変化や核家族化の進行といった社会的な要因が影響していると考える人もいます。例えば、今の社会は「空気を読める」ことが重要だというような風潮が昔より強いかもしれませんね。発達障害の子どもは人の感情を読み取ったり、人と協調することが苦手な場合が多いですから、より目立ちやすい存在になっているのかもしれません。子育ての負担を一人で抱えているお母さんも多いのではと思いますが、人間には、親だけでなく周囲の人々が共同で子育てをしてきた長い歴史があります。一人で悩まず周囲に助言や支援を求めたり、専門機関へ相談したりしてほしいと思います。


地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター
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